「子どもの遊ぶ権利」

講演「子どもの遊ぶ権利」(2)

子どもの犠牲多い交通事故

子どもが不安感を抱くもう一つの要因として、「車」があります。残念なことに何10万という子どもが自動車事故で亡くなっています。
スウェーデンの心理学者スティナ・サンデルスは、’60年代に書いたた論文の中で、12歳になるまでは大人のように自動車交通に対して的確な判断力をもって対処できない、と言っています。この心理学者によれば、子どもは精神的にも12歳になるまで、自動車交通の状況を判断する能力が育っていない、ということになります。

遊び場は、できるだけ家の近くに

家の出入り口は、できるだけ遊び場に面していた方がよいと思います。そうすれば、子どもは安心して遊べますし、親たちは例えば駐車場を家のすぐそばでなく、何メートルか離れて設けるとしても、我慢しなければならないと思います。
家に近い遊び場が特に重要です。子どもたちは毎日、それほど長い距離を歩いて遊び場にいくことはありません。

自動車道路や駐車場は住宅街の外に

第2次大戦後に建てられたスウェーデンの住宅街では、自動車道路や駐車場が、住宅街の外に設けられています。こどもたちは、学校や保育園、また、遊びに行く時、自動車の通る道を横断しなくてすみます。このように、自動車交通から子どもを完全に切り離すことによって、子どもの自動車事故は近年減ってきています。
しかし、昔ながらの住宅街ではそのような措置をとるわけにはいきません。オランダでは、そこで通りに面したテナントや家の親たちが協会や組合を組織して、町の当局と交渉し、道路をヴォンネルフ、すなわちコミュニティ道路として扱ってもらうよう、働きかけたのです。

道路の一部を遊び場に変えたオランダ

このようにして、道路の一部を遊べるような形に造り変えられていきました。道路の真中に木を植えたり、道路の所々に小さな起伏を造ることにより、自動車のスピードがかからないような配慮がなされました。自動車道路が遊び道路に変えられていったわけです。
しかしながら、この道路にもまだ車は入ってきます。残念なことに、入ってくる車は必ずしも、スピードをダウンしてくれない場合もありますが、オランダではこのようなコミュニティ道路、ヴォンネルフを造ることは非常に大きな運動として、広がっていきました。ここ10年間に、何千ものコミュニティ道路が造られました。

コミュニティ道路には子どもの遊びを示すサインが

コミュニティ道路には、そのことを示すサインが出されています。「ここは住宅街です。子どもが遊んでいます」と、標識は教えてくれます。このやり方は、昔ながらの住宅街では解決策として有効であると思います。しかし、新しい住宅街では、この方法では自動車交通をカットできるわけではありません。自動車交通と住宅街とを分ける措置をとるべきであります。

子どもの遊ぶ権利に政治家や都市計画家は深慮必要

子どもの遊ぶ権利は、政治家や都市計画家たちも深刻に考慮すべき課題であると思います。私の考えでは、居住区を計画する際、子どもの問題に第一の優先順位を与えるべきです。子どもたちは、私たちの社会の中で最も弱い立場にあるからです。