都市化社会と孤立化する家庭・家族

氾濫する情報に現実感覚失う

最近、山口県の高校で、男子生徒が教室に手製爆弾を投げ入れて、多数の生徒を負傷させるというショッキングな事件が起きました。
恨みによる反抗のようですが、報道によれば、爆弾を投げ込んだ生徒自身が、あまりの威力に驚いて、用意した2個目の爆弾を使わなかったのはそのためらしい、ということのようです。
こうした威力ある爆弾を、経験もない高校生が作り出せたのも、爆弾づくりの知識をインターネット上から簡単に得られたからです。
集合自殺の場合も、インターネットで仲間を誘い合い、見ず知らずの人がただ死ぬというだけで集まります。インターネットと若者、という図式がここにも鮮明に浮かび上がります。
インターネットやゲームというバーチャルな世界と、現実の区別のできないような、なんとも理解しがたい事件が、子どもたちの世界で蔓延しています。教師はもとより、親でさえ理解できないような世界に子どもたちは迷い込んでしまったのでしょうか。

規則や罰則では効果は期待できない

今日のこの高度情報化社会は、放っておいたら、行き着く先はどのような社会になるのか、それも時代を担う子どもたちの問題だけに、ことは深刻です。
大人たちはだからといって、規則や罰則を強化してみても、それで効果が上がるとも思えません。学校の細かな学則で、事態が改善されたとはとてもいえない状況がそれを物語っています。
また、家庭でも、親がしつけのためだと体罰を繰り返すことが、事態をますます深刻にしています。
厳しいしつけは、往々にして体罰を容認する風潮があります。家庭だけでなく、学校の教師にも、教育のためなら体罰もやむをえないと容認し、むしろそれを必要とする保護者さえ多いということです。
いまの社会は、子どものときからストレスの多い社会になっています。学校や塾では競争競争で進学で人生が決まってしまうかのようにあおり、本来楽しいはずのスポーツも、野球でいえば甲子園を目指すことだけが全てのような印象です。
唯一、インターネットやゲームのバーチャルな世界の中が、子どもらの逃げ場になっていなかったでしょうか。それだけに、この逃げ場を、もっと建設的な方法で与えてやることの一つが、冒険遊び場などの活動です。
バーチャルな世界から、現実の世界で思いきり想像力や創造力を発揮して汗を流す、そんな活動に夢中になれるような場や機会を大人が用意しなければ、今の都市化した社会では、子どもだけでは手におえないのです。

都市化社会が孤立化し孤独なマイホーム主義を生む

ところで、戦後、急速な産業化の進展で、農村は少数の専業農家と多数の兼業農家や非農家が混在する地域に変わり、都市もアパートやマンションが乱立し、団地や新興住宅地域が都市社会の典型となりました。
かつての共同体的な強制や非民主的な拘束はなくなったものの、一方で、住民一人ひとりのエゴイズムも強くなり、核家族化の進行は閉鎖的マイホーム主義を増やし、個々の家庭は地域で孤立し、孤独な環境が家庭の機能低下に拍車をかけています。この弱体化した家庭の機能を補強する意味でも、マイホームに埋没しがちな住民が、地域で互いに支え合えるような生活環境をつくりだしていくことが、いまなにより必要です。

お父さんが主役に”おやじの会”などに期待

その担い手に、これまではお母さんたちが中心でしたが、これからはお母さんとともに、お父さんたちにぜひとも主役をかってでてもらいたいと思います。
ここで述べているような理屈も、お父さんならご自身の子ども時代の経験と合わせて、現在の社会のありようにもきっと思い当たるものがあると思うのです。そんな思いを地域社会の中で、存分に話し合いながら、子どもらとの意思疎通を図ってもらいたいと願って止みません。
幸い、近年、中高年の男性が、積極的に社会活動に参加されている事例が増えています。すばらしいことだと思います。
もう一昔以上も前になりましょうか、「じゃおの会」とかの名称で、お父さんたちが、地域の活動に名乗りをあげました。「おやじ」を逆さまにしての名称です。多少のテレがあったのでしょうか。しかし、そんな動きが地域で注目されていました。
そして最近は、「おやじの会」と、なんのテレもなく名乗り、活動を各地ではじめています。新しい胎動が地域に起こり始めた証しだと思います。そして、いま団塊の世代といはれる人々が、2年後、07年から定年を迎える時をにきています。
「じゃおの会」や「おやじの会」をはじめ、NPOとか福祉問題などで活動を始めた中高年の男性たちの動きが、今までとかく女性にまかせがちだったこれまでの地域社会における無関心なあり方を変えてくれるでしょう。そして、男性たちが、地域問題に主体的に関わるようになったとき、これまでの女性まかせの日本社会に、新しいい希望の萌芽を見ることができるのではないでしょうか。